※②賃貸人からの解除の意思表示を受領する代理権は、あくまで「意思表示を受けることのみ」が契約内容ですので、代理権を受任者に授与することで賃貸人からの解除意思は受領されます。
残置物関係事務委任契約とは、賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に、物件内の残置物の処理・指定された送付先への送付等の事務を受任者に委託する準委任契約です。
受任者は、事務処理のために物件に立ち入ることができ、残置物を物件から搬出し、別の場所に保管することができます。(第9条)
また、受任者は、委任者の死亡を知った時は委任者死亡通知先に対し、委任者の死亡・事務委任を受けていることを通知する必要があります。
※委任者が、自身の死亡時の通知を希望していない場合、委任者の死亡通知を行う必要はありません。
委任者が死亡した時点で物件又はその敷地内に残した残置物(金銭を除く)かつ委任者が廃棄してはならないものとして指定した物として指定したもの。
ただし、処理方法として「廃棄」を指定した場合は廃棄を行います。
(例)遺言で相続させた残置物、遺贈や死因贈与した残置物等
委任者が死亡した時点で物件又はその敷地内に残した残置物(金銭を除く)かつ委任者の所有物であり、指定残置物に含まれないもの。
委任者が死亡した場合、委任者の立場は相続人が相続します。
そのため、相続人の一人が非指定残置物の一部の引き取りを希望した場合はこれに応ずることも委任の範囲内となります。
また、客観的価値のある残置物などは、換価し相続人に返還することが望ましいとされています。
(例)複数の相続人が引き取り希望した場合等
指定残置物の内容とその処理方法を記載したリストで、委任者が指定する場合は作成する必要があります。
(例)
指定残置物:ピアノ(○○社製)
現在の保管場所:居間
所有者:委任者
送付先:○○ ○○さん 〒000-0000 ・・・・・
備考:上記送付先に死因贈与したもの
残置物関係事務委託契約では、トラブル回避のために委任者が指定残置物として明確に指定することが重要になります。
指定残置物の指定に関し以下のように定められています。
①指定残置物リストに掲載
※金庫などに廃棄してはいけないもの(送付しないもの)をまとめて保管し、その旨をリストに記載することも可能です。
②指定残置物に指標(シール等)を貼付
いずれの指定方法であっても、送付先を明確にする必要があります。
遺贈は、遺言執行者がいる場合は遺言執行者のみが行うことができます。
そのため、遺贈する指定残置物の送付先も遺言執行者宛にする必要があります。
※送付先が遺言執行者であることを明らかにする必要はありません。
また、送付先行方不明などで送付が困難な場合は、委任者の死後【3ヶ月】経過かつ賃貸借契約終了の後換価・廃棄することができます。
残置物の中で廃棄してはいけないものとして、主に2つ挙げられます。
①委任者の所有物で、廃棄を希望しないもの
②委任者以外の所有物
これらは廃棄してしまうと受贈者や本来の所有者との間でトラブルが生じかねないため、指定残置物として指定することを義務付けています。
また、指定をしなかった場合、受任者が廃棄をしてしまっても不法行為責任は生じないと考えられます。
委任者の立場を相続した相続人が、受贈者・本来の所有者に対し損害賠償等が請求される余地があるため、事前に明確に指定することが大切です。
残置物の処理に関しては廃棄・換価後にトラブルが生ずる可能性があります。
トラブルを防止するために、非指定残置物を廃棄等するまでに一定期間を置くことが定められています。
処理に関して以下のように定められています。
- 非指定残置物(保管に適さないものを除く)の廃棄・換価
①委任者の死亡から【3ヶ月】経過かつ、賃貸借契約が終了した場合廃棄破棄することができる
※【】内は当事者が具体的な事案に即して合意の内容や必要事項等を記載します。
②換価できる残置物は換価に努める
食料品など、3ヶ月間の保管ができないものは委任者の死後、直ちに廃棄することができます。
第三者の立ち合いのもと、非指定残置物の状況を確認・記録する必要があります。
※リサイクル業者等に依頼する場合は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」上、原則廃棄物処理業に係る許可が必要です。
モデル契約条項では、物件内に残された金銭は指定残置物にも非指定残置物にも該当しないとあります。(第8条)
そのため、金銭はいずれにしても委任者の相続人に返還することとしています。
また、残置物を換価し得た金銭についても、一旦委任者の相続人へ返還することとしています。
基本的に、委任事務処理の費用を負担するのは委任者(もしくはその相続人)です。
相続人がいない場合や所在がわからない場合、賃貸人が第三者弁済を行うことができます。
第三者弁済では敷金を充当させる方法が考えられます。
充当できる敷金が求償権の全部に満たない場合に備えて、求償権を被保証債権とする保証契約を締結したり、費用補償付帯のサービスに加入しておくことが良いでしょう。
ホームネットでは、見守りにプラスして50万円までの費用補償が付帯されているサービスがあります。
条件など詳しく知りたい方は以下のリンクからご確認ください。

残置物関係事務委託契約は以下の2つの状況において終了します。
- 賃貸借契約が終了した時に委任者が死亡していない場合
- 受任者が委任者の死亡を知った日時から【6ヶ月】が経過するまでに賃貸借契約が終了しなかった場合
※【】内は当事者が具体的な事案に即して合意の内容や必要事項等を記載します。