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空室対策にも役立つ!「残置物の処理等に関するモデル契約条項」の解説とメリット

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空室対策にも役立つ!「残置物の処理等に関するモデル契約条項」の解説とメリット

賃貸管理業務において、入居者が死亡した場合、相続人の有無・所在がわからないことや、連絡がつかないことがあります。
そうした場合、賃貸借契約の終了が遅れたり、物件内に残された動産(以下、「残置物」といいます。)を処理することが困難になることがあります。
残置物に関するリスク対策として注目されているのが、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(以下、「モデル契約条項」といいます。)です。
本コラムでは、このモデル契約について解説します。


残置物とは?

残置物とは、契約終了後に物件内に残された家具、家電、ゴミなどの物品を指します。
例えば、賃貸物件を退去する際に借主が持ち出し忘れた家具や、売買契約後に売主が置き去りにした家電などが該当します。
これらの残置物の処理方法が明確でない場合、物件の引き渡しや次の利用者への影響を及ぼす可能性があります。
賃貸用建物所有者の中には、賃貸借契約の終了が遅れたり、残置物を処理することが困難になるというリスクを感じている方もいるでしょう。
国土交通省ではこのリスクを、「残置物リスク」といい、モデル契約条項を残置物リスク対策として令和6年3月に策定されました。


モデル契約条項の目的と必要性

モデル契約条項は単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理することを目的としています。
超高齢社会の中で、孤独死や急逝といった事態が増加する可能性があり、賃貸経営のリスク管理の一つとして注目されています。
モデル契約条項が必要となる場合は以下のような理由があります。

  • 残置物の所有権の問題
残置物は基本的に入居者やその相続人の所有物とみなされるため、オーナーや管理会社が勝手に処分することは法的に問題となる可能性があります。
  • 処理費用の負担問題
残置物の処理には、廃棄費用や清掃費用がかかりますが、これを誰が負担するのかが明確でない場合、トラブルに発展することがあります。
  • 迅速な対応の難しさ
特に孤独死などの場合、相続人や関係者との連絡がつかず、残置物の処理が長期間にわたって滞ることがあります。
その結果、物件の再募集が遅れ、空室期間が長引くリスクがあります。
モデル契約条項を事前に賃貸借契約に組み込むことで、残置物処理の責任や手続きを明確化し、トラブルを未然に防ぐことができます。


モデル契約条項の内容

モデル契約条項は大きく3つに分かれます。
  • (第1)解除関係事務委任契約に関する条項
  • (第2)残置物関係事務委託契約に関する条項
  • (第3)賃貸借契約に関連する条項
それぞれ説明します。

(第1)解除関係事務委任契約に関する条項

解除関係事務委任契約とは、賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に、賃貸借契約を終了させるための代理権を受任者に授与する委任契約です。
代理権は①賃貸人との間で賃貸借契約を合意解除する代理権と②賃貸人から解除の意思表示を受領する代理権があります。

代理権を受任者に授与する理由は以下の2つが挙げられます。
  • 賃貸借契約の解除が賃借人側にその意思表示をする者が必要であり、不在の場合は解除が困難であること
  • 賃貸人側から債務不履行を理由として解除する場合も、解除の意思表示を受領する者がいなければ解除できないこと
※②賃貸人からの解除の意思表示を受領する代理権は、あくまで「意思表示を受けることのみ」が契約内容ですので、代理権を受任者に授与することで賃貸人からの解除意思は受領されます。

契約の終了

解除関係事務委任契約は以下の2つの状況において終了します。
  • 賃貸借契約が終了した場合
  • 受任者が委任者の死亡を知った日時から【6ヶ月】が経過した場合
※【】内は当事者が具体的な事案に即して合意の内容や必要事項等を記載します。


(第2)残置物関係事務委託契約に関する条項

残置物関係事務委任契約とは、賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に、物件内の残置物の処理・指定された送付先への送付等の事務を受任者に委託する準委任契約です。
受任者は、事務処理のために物件に立ち入ることができ、残置物を物件から搬出し、別の場所に保管することができます。(第9条)
また、受任者は、委任者の死亡を知った時は委任者死亡通知先に対し、委任者の死亡・事務委任を受けていることを通知する必要があります。
※委任者が、自身の死亡時の通知を希望していない場合、委任者の死亡通知を行う必要はありません。

用語

  • 指定残置物⇒指定された処理を行う
委任者が死亡した時点で物件又はその敷地内に残した残置物(金銭を除く)かつ委任者が廃棄してはならないものとして指定した物として指定したもの。
ただし、処理方法として「廃棄」を指定した場合は廃棄を行います。
(例)遺言で相続させた残置物、遺贈や死因贈与した残置物等

  • 非指定残置物⇒廃棄又は換価をする
委任者が死亡した時点で物件又はその敷地内に残した残置物(金銭を除く)かつ委任者の所有物であり、指定残置物に含まれないもの。
委任者が死亡した場合、委任者の立場は相続人が相続します。
そのため、相続人の一人が非指定残置物の一部の引き取りを希望した場合はこれに応ずることも委任の範囲内となります。
また、客観的価値のある残置物などは、換価し相続人に返還することが望ましいとされています。
(例)複数の相続人が引き取り希望した場合等

  • 指定残置物リスト
指定残置物の内容とその処理方法を記載したリストで、委任者が指定する場合は作成する必要があります。
(例)
指定残置物:ピアノ(○○社製)
現在の保管場所:居間
所有者:委任者
送付先:○○ ○○さん 〒000-0000 ・・・・・
備考:上記送付先に死因贈与したもの


指定残置物の取り扱い

残置物関係事務委託契約では、トラブル回避のために委任者が指定残置物として明確に指定することが重要になります。
指定残置物の指定に関し以下のように定められています。
  • 指定残置物の指定方法
①指定残置物リストに掲載
※金庫などに廃棄してはいけないもの(送付しないもの)をまとめて保管し、その旨をリストに記載することも可能です。
②指定残置物に指標(シール等)を貼付

  • 指定残置物の送付先について
いずれの指定方法であっても、送付先を明確にする必要があります。
遺贈は、遺言執行者がいる場合は遺言執行者のみが行うことができます。
そのため、遺贈する指定残置物の送付先も遺言執行者宛にする必要があります。
※送付先が遺言執行者であることを明らかにする必要はありません。
また、送付先行方不明などで送付が困難な場合は、委任者の死後【3ヶ月】経過かつ賃貸借契約終了の後換価・廃棄することができます。

  • 残置物の指定義務について
残置物の中で廃棄してはいけないものとして、主に2つ挙げられます。
①委任者の所有物で、廃棄を希望しないもの
②委任者以外の所有物
これらは廃棄してしまうと受贈者や本来の所有者との間でトラブルが生じかねないため、指定残置物として指定することを義務付けています。
また、指定をしなかった場合、受任者が廃棄をしてしまっても不法行為責任は生じないと考えられます。
委任者の立場を相続した相続人が、受贈者・本来の所有者に対し損害賠償等が請求される余地があるため、事前に明確に指定することが大切です。


非指定残置物の取り扱い

残置物の処理に関しては廃棄・換価後にトラブルが生ずる可能性があります。
トラブルを防止するために、非指定残置物を廃棄等するまでに一定期間を置くことが定められています。
処理に関して以下のように定められています。
  • 非指定残置物(保管に適さないものを除く)の廃棄・換価
①委任者の死亡から【3ヶ月】経過かつ、賃貸借契約が終了した場合廃棄破棄することができる
※【】内は当事者が具体的な事案に即して合意の内容や必要事項等を記載します。
②換価できる残置物は換価に努める
  • 保管に適さない非指定残置物
食料品など、3ヶ月間の保管ができないものは委任者の死後、直ちに廃棄することができます。
  • 廃棄・換価・搬出について
第三者の立ち合いのもと、非指定残置物の状況を確認・記録する必要があります。
※リサイクル業者等に依頼する場合は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」上、原則廃棄物処理業に係る許可が必要です。

金銭の取り扱い

モデル契約条項では、物件内に残された金銭は指定残置物にも非指定残置物にも該当しないとあります。(第8条)
そのため、金銭はいずれにしても委任者の相続人に返還することとしています。
また、残置物を換価し得た金銭についても、一旦委任者の相続人へ返還することとしています。

委任事務処理費用について

基本的に、委任事務処理の費用を負担するのは委任者(もしくはその相続人)です。
相続人がいない場合や所在がわからない場合、賃貸人が第三者弁済を行うことができます。
第三者弁済では敷金を充当させる方法が考えられます。
充当できる敷金が求償権の全部に満たない場合に備えて、求償権を被保証債権とする保証契約を締結したり、費用補償付帯のサービスに加入しておくことが良いでしょう。
ホームネットでは、見守りにプラスして50万円までの費用補償が付帯されているサービスがあります。
条件など詳しく知りたい方は以下のリンクからご確認ください。




契約の終了

残置物関係事務委託契約は以下の2つの状況において終了します。
  • 賃貸借契約が終了した時に委任者が死亡していない場合
  • 受任者が委任者の死亡を知った日時から【6ヶ月】が経過するまでに賃貸借契約が終了しなかった場合
※【】内は当事者が具体的な事案に即して合意の内容や必要事項等を記載します。

(第3)賃貸借契約におけるモデル契約条項

賃貸借契約の存続中、受任者の変更などで(第1)(第2)の契約が変更になった場合、賃借人は新たに(第1)(第2)の契約を締結する必要があることを定義しています。
また、賃借人は新しい締結について賃貸人へ通知を行う必要があります。


契約の受任者について

受任者には、委任者の意向や事情を考慮し、委任者の利益の為に委任事務を処理する責任があります。
受任者には、以下のような人が挙げられます。
  • 入居者の推定相続人
  • 居住支援法人
  • 管理業者


契約締結から契約終了までの手順

実際に契約を結ぶまでの流れを説明します。

1.受任者の選定
2.残置物の処理等に関するモデル契約の締結
3.賃貸借契約の締結
4.指定残置物の指定
5.賃貸人による委任者の死亡通知
6.賃貸借契約の解除
7.賃貸借契約終了の通知
8.死亡時通知先への委任者の死亡通知および残置物処理事務の受託している旨の通知
9.残置物の処理


契約を締結するメリット

超高齢社会の中で、身寄りのいない単身高齢者の賃貸への入居が増加しています。
物件によっては、単身高齢者の入居を受け入れることで物件の空室対策にもなります。
単身高齢者を受け入れる際にモデル契約条項に基づき契約締結することで、以下のようなメリットがあります。

  • 相続人や関係者とのトラブルの未然防止
  • 物件の再募集までの時間短縮
  • 賃貸人の安心
  • 管理業務の負担軽減


まとめ

モデル契約条項は今後、住宅セーフティネット法の改正などで注目されている家財整理・残置物処理に対しても効果があります。
賃貸管理業務においては、残置物リスクにどのような対策をとるのかを考える必要があります。
また、ホームネットでは様々な見守りサービスによって賃貸人の安心をサポートしています。
資料のダウンロードも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。



ホームネット株式会社

著者情報

ホームネット株式会社 Sugiyama.M

2024年に新卒で入社。

生活に欠かせないインフラとして住まいを支えるサービスの提供、

持続可能な社会の構築に寄与するという企業理念に惹かれ入社を決意。

憧れる先輩、上司に揉まれながら力戦奮闘してます。

 



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