
EAPは“導入して終わり”ではない|利用される施策へ進化させるための現実的アプローチ
「最近、上司が何も言ってくれない」
「注意されたことがほとんどない」
「期待されていないのではないか――」
こうした声を、現場で耳にする機会が増えています。
叱責や強い指導がなく、穏やかな関係性が保たれている職場は、一見すると理想的な環境のようにも映ります。
しかしその一方で、ハラスメントと受け取られることへの過度な懸念から、本来必要な指導やフィードバックが控えられているケースも少なくありません。
その結果として生まれているのが、「ホワイトハラスメント」と呼ばれる状態でです。
上司の配慮や善意が、意図せず部下の成長機会を奪い、組織全体の活力低下につながる――こうした構造は、企業にとって看過できない課題となりつつあります。
本記事では、この「ホワイトハラスメント」の実態と背景を整理したうえで、企業が直面するリスクと求められる対応について考察してみます。
近年、日本企業ではハラスメント対策が進み、特にパワーハラスメントへの対応は大きく強化されてきました。
その影響もあり、「指導の仕方」についての意識は、現場レベルでも確実に変わりつつあります。
ただ、その変化の中で、別の悩みも見え始めています。
「どこまで言っていいのかわからない」
「強く言うと問題になるのではないか」
こうした不安から、必要な指導やフィードバックを控えてしまう場面が増えているようです。
ホワイトハラスメントとは、ハラスメントと受け取られることを過度に意識するあまり、必要な指導や関わりを避けてしまう状態を指す言葉です。
一見すると「優しさ」や「配慮」に見える行動でも、結果として部下の成長機会を奪ってしまったり、組織全体の力を弱めてしまったりすることがあります。
なお、この言葉は法律で定義されているものではありません。
しかし、内容によっては既存のハラスメントに該当する可能性もあるため、注意が必要です。
3-1 パワハラとの関係
厚生労働省は、パワーハラスメントを「優越的な関係を背景に、業務の範囲を超えた言動によって就業環境が害されること」と定義しています。
その中には、「仕事を与えない」「レベルの低い業務ばかりを任せる」といった行為も含まれています。
そのため、過度な配慮によって業務の機会が制限される状態が続いた場合には、ホワイトハラスメントがパワハラと評価される可能性も考えられます。
ホワイトハラスメントは、日常業務の中で自然に起きやすいものです。
① 指導しない
ミスがあっても深く踏み込まず、「次は気をつけよう」と軽く済ませてしまうケースです。
この状態では、本人が改善点を理解できず、同じミスが繰り返されやすくなります。
② 任せない
「まだ難しいだろう」と考えて、重要な業務を任せず、無難な仕事だけを割り当てるケースです。
その結果、経験を積む機会が減り、成長が止まってしまうことがあります。
③ 指摘しない
評価面談などでもネガティブな内容を避け、良い話だけで終わってしまうケースです。
一時的には関係性が保たれますが、改善にはつながりにくくなります。
5-1 法改正の影響
パワハラ防止の義務化によって、企業全体の意識は確実に高まりました。
一方で、「とにかく避けよう」という方向に傾きすぎてしまった面もあるようです。
5-2 管理職のプレッシャー
現場の管理職は、「どこまで指導してよいのか」を常に意識しています。
その結果、判断に迷う場合には「何も言わない」という選択をしてしまうこともあります。
5-3 部下との認識ギャップ
一方で、部下側は「もっと指摘してほしい」と感じているケースも少なくありません。
この認識のズレが、問題をより複雑にしています。
ホワイトハラスメントが続くと、組織には少しずつ影響が出てきます。
人材が育たなくなったり、評価制度が形だけのものになったり、従業員のモチベーションが下がってしまうこともあります。
また、「期待されていないのではないか」という不満が積み重なることで、離職につながる可能性もあります。
さらに状況が悪化すれば、法的な問題に発展することも否定できません。
では、どのように対応すればよいのでしょうか。
重要なのは、「厳しくすること」ではなく、適切に関わるための基準を整えることです。
① 指導基準を明確にする
どこまでが適切な指導なのかを言語化し、組織内で共有することが大切です。
② フィードバックを日常化する
良い点だけでなく、改善点も含めて伝えることを当たり前にしていく必要があります。
③ 管理職の育成
「避ける」のではなく、「どう伝えるか」を学ぶ機会を設けることが重要です。
④ 状況を見える化する
部署ごとの指導状況や、コミュニケーションの質を把握できる仕組みを整えることも有効です。
ホワイトハラスメントは、「やりすぎ」ではなく、「やらなすぎ」によって生じる問題です。
そのため気づきにくく、知らないうちに広がってしまうことがあります。
人材育成においては、優しさだけでも、厳しさだけでもうまくいきません。
大切なのは、そのバランスをどう取るかという視点です。
適切な距離感で関わりながら成長を支えていく――
その設計こそが、これからの組織運営に求められているといえます。
ホワイトハラスメントの背景には、「どう関わればよいのか分からない」という現場の迷いがあるといえます。
こうした課題に対しては、制度や研修だけでなく、社員一人ひとりが安心して相談できる環境づくりも欠かせません。
当社では、従業員や管理職が気軽に利用できる健康・メンタル相談サービスを提供し、日々の悩みや不安の早期解消、組織のコンディション維持を支援しています。
職場のコミュニケーションやマネジメントに課題を感じている場合は、ぜひ一度、ご相談ください。

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