
健康経営サービスの“最後のピース” なぜ多くの施策は「相談先不足」で止まってしまうのか
健康経営の推進に伴い、多くの企業で従業員の健康状態を把握するための仕組みが整備されています。
・健康診断
・ストレスチェック
・健康管理システム
・エンゲージメントサーベイ
・勤怠データ分析
などを活用し、組織の健康状態を可視化する企業は年々増加しています。
しかしその一方で、「データは集まっているのに生産性が改善しない」という声も少なくありません。
なぜこのような状況が起こるのでしょうか。
その背景には、健康経営における重要な課題である「プレゼンティーズム」への対応不足が存在しています。
本記事では、健康経営施策と生産性向上の関係を整理しながら、プレゼンティーズム対策に必要な視点について考察します。
プレゼンティーズム(Presenteeism)とは、出勤しているにもかかわらず、心身の不調によって本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。
企業における健康課題としては、
■ アブセンティーズム
病気や不調による欠勤
■ プレゼンティーズム
出勤しているが生産性が低下している状態
の2つがよく知られています。
実は近年、多くの研究において、欠勤による損失よりもプレゼンティーズムによる損失の方が大きい可能性が指摘されています。
つまり、企業の生産性を左右するのは、休んでいる従業員よりも、「無理をして働いている従業員」であるケースが少なくないのです。
近年はさまざまなツールによって、従業員の状態を把握しやすくなりました。
例えば、
・ストレスレベル
・残業時間
・睡眠傾向
・エンゲージメント
・健康診断結果
・離職リスク
などを可視化できるサービスが普及しています。
これにより、「従業員の状態が見えない」という課題は大きく改善されました。
しかし、データが見えれば自然と課題が解決するわけではありません。
大きな理由の一つが、人は課題を認識しただけでは行動しないからです。
例えば、ストレスチェックで高ストレス傾向が示されても、
・自分はまだ大丈夫
・忙しくて対応できない
・誰に相談すればよいかわからない
と考え、そのまま放置されることがあります。
また、健康診断で生活習慣の改善が必要と指摘されても、実際に行動へ移せる人は限られています。
つまり、企業が取得しているデータは「状態の可視化」であり、「改善そのもの」ではないのです。
プレゼンティーズムは、必ずしも病気や重度のメンタル不調が原因ではありません。
例えば、
・慢性的な疲労
・睡眠不足
・肩こりや腰痛
・家庭の悩み
・人間関係のストレス
・将来への不安
といった比較的小さな問題が積み重なって発生することがあります。
こうした不調は、医療機関を受診するほどではなくても、仕事への集中力や判断力、生産性へ影響を及ぼします。
そのため、企業が本当に向き合うべきなのは、重症化した後ではなく、不調の芽が生まれた初期段階なのです。
企業が健康データを取得した後、実際の改善を妨げる要因としてよく挙げられるのが、相談先の不足です。
例えば、従業員が不安を感じたとき、
・人事へ相談しづらい
・上司には話しにくい
・産業医と接点がない
・どこへ相談すればよいかわからない
という状況は珍しくありません。
結果として、問題が放置され、プレゼンティーズムの長期化につながるケースがあります。
つまり、企業に必要なのは、データを増やすことだけではなく、従業員が早期に相談できる環境を整えることなのです。
プレゼンティーズム対策が進んでいる企業には共通点があります。
それは、健康データを取得するだけでなく、その後の行動を支援する仕組みを持っていることです。
例えば、
・健康相談窓口
・メンタルヘルス相談
・外部専門家への接続
・セルフケア支援
・継続的なフォロー体制
などです。
従業員が不調を抱えた段階で相談できれば、深刻な問題へ発展する前に対応できる可能性が高まります。
これは、従業員本人だけでなく、企業全体の生産性向上にもつながります。
健康経営は、「データを取得すること」がゴールではありません。
本来の目的は、従業員が健康でいきいきと働き、企業の持続的な成長につなげることです。
そのためには、
・健康診断
・ストレスチェック
・サーベイ
・健康管理システム
などによる可視化だけではなく、従業員の行動変容を支援する仕組みが欠かせません。
今後は、データ活用と相談支援をどのように組み合わせるかが、健康経営の成果を左右する重要なポイントになるでしょう。
プレゼンティーズムは、企業の生産性低下を引き起こす大きな要因の一つです。
多くの企業では、健康データの取得や分析は進んでいる一方で、その後の支援体制が十分とは言えません。
データで課題を把握し、相談体制で行動変容を促す。
この両輪が揃って初めて、健康経営施策は本来の価値を発揮します。
これからの健康経営においては、「何を測るか」だけでなく、「誰を、どのように支援するか」という視点がますます重要になると考えられます。
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